【書籍】ひなまつり&国際女性デーによせて

本日は女の子を言祝ぐひなまつりの日。3月8日の国際女性デーも近いので、合わせて本棚からジェンダー関連の本を引っ張り出していくつか紹介してみようと思う。ちなみに国際女性デーの際には「国際男性デーはないのかよ」と文句を言う人が一定数出るのが定番らしいが、11月の国際男性デーになってもまだブログを書く気が残っていたら男の子版の選書も載せたい*1。とは言え、性差別はすべての性別の方が当事者であり、今回の選書もぜひ男性にも手に取ってほしい

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ライターの堀越英美さんが、ステレオタイプを植え付けるような子育てはしていないはずなのに娘がピンク大好き女児になってしまい困惑した経験から「女の子とピンク」というテーマで書いた本。意外と定着して日が浅い「女の子はピンク、男の子はブルー」イメージの歴史的経緯に始まり、日本でのピンク色の変遷、アメリカの女児向け玩具のトレンドなど、女の子/女性とピンクの関係を読みやすく楽しい文章で考えられる。私は本屋さんで気になった本を気ままに買うタイプで特定の好きな作家というのはほとんどいないのだけど、確かな下調べに裏付けされた明晰さと声を出して笑ってしまうようなユーモアを両立する堀越英美さんの文章は大好きで著書はチェックしてしまう。他に「スゴ母列伝」「不道徳お母さん講座」も面白いぞ!

 

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前述の「女の子は本当に~」を書いた堀越英美さんの翻訳。女子生徒限定の無料プログラミング講座を一緒に受講した高校生二人がペアを組み、講座の最終課題で女の子がタンポンを投げて敵を倒す横スクロールのアクションゲーム「タンポン・ラン」を作ったことが話題になり、二人は思いもよらぬ経験をしていくことになる。実話を元にしていて熱いシスターフッドに元気が出る上に著者はタンポン・ランを作った本人たち(執筆時点でまだ大学生ぐらいだったはず)ということで、ティーンぐらいの若い方には特におすすめ。ティーンをとうに通過した私としては、男女問わず彼女たちが出会う大人のほとんど(※酷いセクハラ発言をしたラジオ司会者を除く)が二人を優しく手厚くサポートしているところに背筋が伸びる思いだった。

 

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科学や学問に関するノンフィクションが好きなので、こういうテーマの本には惹かれがち。フルカラーのおしゃれな紙面で多彩な研究の話を読むことができて楽しい。テーマが多岐に渡るので、皆さんも心に残る記事があるのではないだろうか。最近なぜかTwitterトランスジェンダーの方に対する心ない発言を見かけることが増えたため、それらより先にこちらの本でトランスジェンダー研究についての記事を読めたのは幸運だった。

 

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オーケストラの分野で採用が進んでいる「ブラインド・オーディション」について聞いたことがあるだろうか。採用試験の際に演奏者と審査員の間をカーテンなどで仕切り、審査員に演奏者の性別や人種が分からない状態で選考させる手法のことで、このカーテン1枚で女性のプレイヤーが次の選考へ進む割合が1.5倍に上昇したうえ、最終的に採用される比率も上昇したとか。このように、仮に積極的に「よーし、頑張って男尊女卑を維持・拡大するぞ!」と思っているわけではなくとも、バイアスのある世界で生まれ育った私たちには必ずバイアスが存在する。この本では、主に政治や経済の分野でどのような男女の格差やバイアスが存在し、どのように解決できる可能性があるのかについて書かれている。各国の多様な事例が引かれていて単純にメチャクチャ面白い。採用や人事などの権限がある方にとっては非常に実用的でもあるだろう。

 

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この本はすごかった…!普段本を読んでいて声が出てしまうことなんてほとんどないけど、これに関しては結構な頻度でページをめくりながら「ああ~…」とうめいてしまった。「フェミニストはなんでもかんでもジェンダーの話に絡めてくる」と思ったことはありませんか?それは予想以上に世界の多くの事象に実際にジェンダーの問題が絡んでいるから。帯にでっかく「世界の見方がひっくり返る!」と書いてありますが、私に言わせればそれは決して誇張ではない。とりあえず読んでみてほしい。

*1:とか言いつつ、「国際男性デーは?」という問いの答えとしては「あるよ、11月19日だよ」という「正しい」やつより、「国際女性デー以外は364日ずっと国際男性デーだよ」のほうが個人的には好きではある