ディオール展とマリー・クワント展に行ってきました

東京在住の友人と二人でクリスチャン・ディオール展とマリー・クワント展を見てきた。ここ数年ほぼ遠出をしていなかったため長距離移動をして1日に2つ展示会を見て回るのは体力的にはなかなかのダメージだったが、それだけのエネルギーを注ぐ価値はあった。ディオールとマリークワント、一緒に見ると対比がめちゃくちゃ面白い…!行ける状況の方には大変おすすめ。

クリスチャン・ディオール

東京現代美術館にて5月28日まで開催。www.mot-art-museum.jp

私は早起きして新大阪から新幹線に乗り開館後40分ぐらいに着いたものの、友人が早めに行って時間指定チケットを押さえていてくれなかったら昼過ぎまで入場できないところだった…。東京の人気展覧会をナメていた。彼女には感謝しかありません。土日祝日に行かれる方は気を付けた方が良さそう。

私は正直ほかのハイブランド同様ディオールにも興味を持った経験がなく、どういうテイストがディオールっぽいのかさえ何も分からないまま足を踏み入れたのだけど、素人目に見ても凄まじい技と労力がかかっていることが伝わるドレスがたくさんあって圧倒された。これはそりゃ憧れてハマる人も少なくないでしょうねと納得できる。遠目には油彩のようなプリントがされているように見えて実は全部刺繍だったり、折り紙のように形自体が凝っていて新鮮なものなど。想像もできないような値段がするであろう洋服の数々をガラスの仕切りさえなく間近に見られるのは楽しい。しかも撮影OKという太っ腹ぶり。

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また驚いたのが洋服やカバン本体のみならず空間演出も大変工夫が凝らされていることで、進んでいくとブースごとに全く違う空間が現れて驚嘆することしきりだった。これは確実に資料写真を眺めるだけでは得られない体験。中には洋服とお客さんが立つ場所の間にまあまあの深さの溝がある箇所もあり、もしここでうっかり足を引っかけてドレスをなぎ倒したりしたらどれだけ借金することになるのかな…と内心うろたえていた(実際には保険がかけられてるとは思いますが…)。

中でも印象的だったのは、本番の生地を使う前に白い布で試作されたドレスが並ぶ最後のブース。紙に描いた花柄のスケッチがタッカーで打ち付けられたりしており、完成品が出来上がるまでの長い過程が垣間見えるのが興味深い。

ただ年代順には並んでいないので、欲を言うなら「○年ごろはこういうシルエットが流行っていたんだな」などの時系列での変遷を見たかった気はする。それぞれの空間に合うものという基準で展示したのかな?

ちなみに帰ってきたあと「ディオールと私」というドキュメンタリー映画*1がアマプラにあったので記念に見てみた。「新デザイナーであるラフ・シモンズが就任して、これから制作する新作ドレスのお披露目ファッションショーまで8週間しかない」という素人目に見ても明らかにヤバい状況が捉えられており(一体なぜそんなことになったのかは語られないけど気になりすぎる)、外から成果物を眺めているぶんには綺麗なだけでも実際は泥臭い労力の賜物なのだということが伝わってくる。名前が表に大きく出るデザイナーのみならず、現場の技術者の方々を称えたくなるドキュメンタリーだった。

 

■マリー・クワント展

Bunkamura ザ・ミュージアムにて1月29日まで開催。

www.bunkamura.co.jp

同じ女性向けファッションという分野でもさっき見たクリスチャン・ディオールの美術品的な佇まいとはもう全然違う!こちらは庶民のお嬢さんでも買える既製服のブランドなのでディオールオートクチュールのような匠の技はなく、比較すれば服としての出来そのものはまあチープと言っていい。とはいえ私は個人的な好悪で言えば、やっぱりワクワクがムクムクするのはマリー・クワントやな…と思った。

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予習のために見たドキュメンタリー映画*2によると、それまで女性ファッションの流行を牽引していたのは一握りのハイパー上流階級だったのが、マリー・クワントなどの登場で初めて「庶民向け既製服の流行が高級ファッションに影響を与える」という逆転現象が起こったらしい。時代的な文脈などが分かり映画も面白いので、鑑賞できる方にはおすすめ。配信やDVDなどで手軽に見られるようになったらいいな。

実用性の面でも、それまではぎゅうぎゅうに締め付けたウェスト+ふわふわ広がるスカート+ハイヒールというような見栄え優先で機能的ではないスタイルが主流だった中で、マリー・クワントが締め付けない膝上丈のワンピースにぺたんこ靴というような動きやすい服を提案して大人気になったそう。私はなんかそういう「苦しい服に痛い靴なんてもうしゃらくせえぜ!ガンガン踊れるスタイルで行くぜ!」みたいなエネルギーにロマンを感じてしまう。当時のファッションショーの映像も少し流れていたけど、モデルのお姉さんたちが音楽に合わせて動き回っており「これ何?遊び人の大学生の乱痴気パーティー?えっファッションショーなの?」というような自由さだった。60年代に音楽の面からイギリスの、ひいては世界中の若者文化・大衆文化に革命をもたらしたのがビートルズストーンズといったロックバンドたちなら、ファッションの面からそれをやったのがマリー・クワントなんだろうな。服そのものもパワーと遊び心にあふれていて、レインコートなどは今見ても欲しくなるくらいだし、コスメのパッケージデザインも全然古びていない。

またパンツスタイルを積極的に取り入れたり、有色人モデルの起用や男性向けメイク用品の発売など、先進性にも驚かされた。