【映画】第13回ムビリオ/メイキング・オブ・モータウン

ビブリオバトルのルールで映画を紹介しあうイベント「ムビリオバトル大阪」を主催している。

moviliobattleosaka.wixsite.com

隔月開催で本日13回目だったので、どうやらつごう3年目になるらしい。月日の経つのの早さよ…。新型コロナウイルスの感染拡大によりオンライン開催で、以前はオンライン開催のときはZoomを使っていたが、今回は試験的にTwitterスペースでやってみた。気軽だし(あと無料だし)、なかなか悪くないかもしれない。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

今回の発表作品は以下の通り:

テーマ「青春」

  1. メイキング・オブ・モータウン
  2. パドルトン
  3. 天然コケッコー
  4. 👑いまを生きる
  5. 味園ユニバース

今回私が紹介したのはこちら。

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メイキング・オブ・モータウン

タイトルの通り、60年代アメリカで人種や国境の壁を越えて一世を風靡したレコード会社モータウンの軌跡を追ったドキュメンタリー。

モータウン発祥の地はデトロイトで、自動車産業の街として有名だった都市(社名のモータウンはモーター・タウンの略で、デトロイトの愛称)。創業者のベリー・ゴーディ氏が、フォードの自動車工場で働いていた時に車のライン生産をヒントにして「音楽業界でも、このように各ステップをシステム化すれば継続してヒットを飛ばせるのでは」と思いついたのが会社を興したきっかけというのが面白い。ドキュメンタリー自体も工場の工程を紹介するような作りになっていて、テンポよく飽きずに見られる。全体にドロドロした内容は控えめで、ゴーディ氏と副社長兼シンガーソングライターのスモーキー・ロビンソン氏の楽しげなズッ友ぶりもあってトーンは明るめ。ただ時代背景から人種差別の話は避けられず、ツアーのためにアメリカ南部へ行った際に初めて人種別のトイレや水飲み場を目の当たりにしてショックを受けた話などは胸が詰まる。

興味深かったのは他の音楽会社は男社会で上層部は男ばかりだった時代に、モータウンには普通に意思決定権のある地位に女性が就いていたということ。白人の社員もおり、その地位にふさわしければ人種も性別も不問というさばけたスタンスだったみたいだ。当時ビジネス面を担当していたイタリア系の男性(当時の写真では映画のイケメンマフィアのよう)が「黒も白も関係ない、大事なのはグリーン(=札の色)だ」と述べているのが象徴的だ。曲をリリースするかも会議の多数決で決めていて、半世紀以上前にこんなに民主的でワンマンでないやり方で成功したというのは驚き。

当然コンサートなど演奏の映像も挟まるのだけど、もちろん皆さん素晴らしいのは大前提としてスティービー・ワンダーマイケル・ジャクソンの才能の塊のようなオーラは圧巻だった。そら芸名に Wonder って付けますわって感じである。マーヴィン・ゲイが「感じたことを書けとあなたが言ったんだろ」とゴーディ氏とぶつかり合い、それまで政治的な曲を避けてきたモータウンのルールを破ってベトナム戦争のプロテストソングを作り上げるシーンもめちゃくちゃかっこいい。当たり前だけど人間は自動車じゃない。

私はモータウン自体は本当に有名な曲やアーティストはなんとなく少し知っているという程度ながらこのドキュメンタリーは無性に気に入っており、去年なんとなくNetflixで見て以来気づいたら4,5回は見ていると思う。大変おすすめの一本。