共感必至のビートルズの曲と社会制度
1966年にビートルズがリリースした名盤「Revolver」の一曲目はジョージ・ハリソンの手になる「Taxman」から始まる。
タイトルにTaxとある通り、自分の収入にかかる所得税があまりに高かったことをきっかけに書かれたらしい*1。
「所得税高すぎるんじゃボケ」という感情から出発しつつ直接「所得税高すぎるんじゃボケ」という歌詞にはせず、架空の徴税人=Taxmanを一人称に置き、理不尽な内容を語らせるダークなユーモアが小気味よく大好きな曲なのだが、ちょっと気になるところもないではなかった。個人的な考えとしては、教育や貧困層への福祉などの必要なところにきちんと使われるなら(←最重要)、高額所得者への課税率が高くなるのは別にいいと思っているので。月々引かれる税金や保険料のことを思うとこの歌に共感できないわけじゃない、というかめちゃくちゃ共感するけど、あなたは稼いでるんだから別にそこまで怒らなくてもいいんじゃない?
そんな折、よく好きな曲の歌詞を調べているサイトのGenius Lyricsでこの曲を見ていたら、説明部分でちょっと下衆な好奇心が沸いてしまった。これ、数学の文章問題みたいな要領で解けてしまうな?
説明部分にあるデータを文章題の形で言うとこんな感じ:
G君はその年の収入1ポンドあたり19シリング6ペンス(1971年までは1ポンド=20シリング=240ペンスという難しそうな通貨体系が使われていたらしい)を税金として支払うことになりました。彼の収入に対する税率はいくらですか。
私がちまちまと鉛筆で計算した結果、彼の収入にかかっていた税金は97.5%だということがわかった。97.5%!
曲中で、徴税人は「お前の取り分は1で俺の取り分は19」、つまり税率は95%だと述べている。実際に計算してみるまで、私はてっきり95%というのは面白くするための誇張だと思っていた。実際には誇張どころか、当時のイギリス税務署より歌に出てくる架空の徴税人の方がちょっぴり課す税率が低かったのか…。もちろん税金を支払ったあとに残る金額だって十分お金持ちのそれではあるけれど*2、彼の音楽的才能と影響力があったらば私でも皮肉った曲のひとつも書きたくなったかもしれない。数学の授業がこんな形で音楽の理解に役立つ日が来るとは思わなかった。
最初の方を少し読んでそのまま積読してしまっている書籍「税金の世界史*3」によると、世の中の人にとって一番大きな買い物は実はマイホームではなく政府、つまり徴収される税金だとか。上記のGenius Lyricsにはビートルズがアップルを設立したのも税金対策の面があったとありますし、税制というものはそれと知らないところでもけっこう人間の営みを左右しているみたい。今はイギリスも含めてここまで極端な累進課税を採用している国ってあんまりないと思うし、期せずして税制に思いを馳せることになりました。みんなも強制購入させられる超高級品であるところの政府の仕事ぶりはしっかり見て、投票権があって行ける状況にある方は張りきって投票しようネ。
おまけ:
実はこのブログの暫定タイトルである All the World is Birthday Cake は、(Taxmanと同じく)ジョージ・ハリソンが書いたビートルズの曲の歌詞から取っています。初出は1968年なのに今聞いても驚くほど古くないタイムレスな名曲で大好きなんですが、配信での再生回数がビートルズの楽曲で十指に入るほど少ないことを知り「なんでやねん!聞けや!」となっているので、よかったら聞いて(そして再生回数に貢献して)ください。